2022年度訓点語学会訓点資料講習会について
訓点語学会では、若手研究者育成のための講習会(訓点資料講習会、古辞書講習会、抄物講習会)を2015年から毎年開催しており、多数の参加者を得ています。今年度は、訓点資料を取り上げて実施することとしました。受講を希望される方は、下記の要領を御一読の上、お申し込みください。
【趣旨】
訓点資料は、国語史研究において重要な位置を占めています。しかし訓点資料研究のためには独特の知識を必要とし、研究者人口の現状とも相俟って、その研究方法の伝承が焦眉の急となっています。
このような現状を背景に訓点資料研究の知識と実技を教授し、幅広く国語史研究や関連諸領域の研究者の日々の研究に役立てて頂けるようにしたいと考えます。
今年度の講習会は、昨年に引き続き9月、12月、3月に開催します。予定している講師と講義内容は次のとおりです。それぞれの約1ヶ月前を目処に受講者を募集します。受講ご希望の方はその都度申し込みください。
【日時】
○第1回
2022年9月4日(日)9時~17時(12時30分から13時30分まで休憩時間)※終了しました。
○第2回
2022年12月18日(日)9時~17時(12時30分から13時30分まで休憩時間)※終了しました。
○第3回
2023年3月12日(日)9時~17時(12時30分から13時30分まで休憩時間)
それぞれの1ヶ月前を目処に募集します。受講ご希望の方はその都度お申し込みください。
【会場】
Zoomによるオンライン講習会(第1、2、3回)
【対象】
訓点資料研究に関心を持っている学生(学部・大学院、研究生、留学生)、若手研究者、一般社会人等
【資格】
申込資格はありませんが、希望者多数の場合は先着順とします。また、第3回の講習の参加に際して、第1・2回を受講している必要はありません。初めての方でも受講して頂けます。
【人数】
30名程度
【費用】
無料
【講師】(五十音順)
宇都宮啓吾(大阪大谷大学教授)(第1回、第2回担当)
小助川貞次(富山大学名誉教授)(第2回、第3回担当)
月本雅幸(東京大学名誉教授)(第1回、第3回担当)
【事前配布資料】
タイムテーブルの詳細等を記した受講の要領と使用資料を事前に配布します。
【申込】
第3回講習会については、下記フォームよりお申し込みください。
締め切り:3月3日(金)
タイムテーブルの詳細等を記した受講の要領と使用資料は、申し込み締め切り後に配布します。
第3回訓点資料講習会・参加申込フォーム
第1回 9月4日(日)開催
宇都宮啓吾「訓点資料概説」
月本雅幸「訓点資料解読の実際」
【第1回講習内容】
宇都宮啓吾
今回の講習は訓点資料に関する入門として位置付け、訓点資料とはどのようなものかとい
った概説的なところから、ヲコト点と加点者との関係についてまでを解説します。初学者
にとって、訓点資料の素性を理解する際の大きなハードルとなるのが、ヲコト点と奥書と
の関係や奥書にある人物をどのように調べるかということです。そのため、この点につい
ても具体的な資料を用いて解説していきます。
月本雅幸
訓点資料を広く国語史研究に活用するためには、それを解読しなくてはなりませんが、その具体的な方法については余り知られていないのが実情です。そこで、具体的な資料の画像を使用して、どのように解読すればよいか、その方法論を具体的に指導します。なお、今回扱う資料はこれまでの月本の講習において扱ったものとは全く異なりますので、従来の講習を受講された方の再度の受講も十分に可能です。
第2回 12月18日(日)開催
小助川貞次「漢籍訓点資料入門」
宇都宮啓吾「訓点資料調査法」
【第2回講習内容】
小助川貞次
訓点資料は漢文の内容から、漢籍訓点資料、仏書訓点資料、国書訓点資料に大別されます。この講習では漢籍訓点資料について、漢文本文の内容、訓点の種類、資料へのアクセス方法、研究課題などの概要を学んだ上で、デジタルアーカイブで公開されている漢籍訓点資料から、古活字版尚書(国立国語研究所日本語史研究資料)、漢書楊雄伝(e国宝)、世説新書(e国宝)を取り上げて、漢籍訓点資料解読の楽しさと難しさを体験します。
宇都宮啓吾
前回に引き続き、訓点資料に関する入門編として、訓点資料の調査法について解説します。訓点資料を前にしてどのように調査をするか、また、どのような点に着目するかといった内容を具体的資料とともに書誌学的な観点を交えて解説していきます。合わせて、聖教の奥書等にある僧名についてどのように調べるかを具体的な資料等に基づいて、解説を行い、そこからどのようなことが考えられるかといった発展的な問題についても言及します。
第3回 3月12日(日)開催
小助川貞次「漢籍訓点資料研究法」
月本雅幸「仏書訓点資料研究法」
【第3回講習内容】
小助川貞次
訓点資料の原本または精密な複製資料へのアクセスの可否の程度によって、その研究法は異なってきます。漢籍訓点資料の場合、近年は精密画像データの公開、原寸原色の精密な複製資料の公開、入手が難しかったかつての複製資料のデジタル公開が進み、最初に出会うアクセスの壁は大分緩和されたようにも見えますが、それでも研究を進めていこうとするとやはり訓点資料特有の難しさに直面することがあります。今回の講習では、藤井有鄰館に所蔵される春秋経伝集解巻第二と京都国立博物館に所蔵される漢書楊雄伝を取り上げ、両者の研究環境を対比しながら、漢籍訓点資料の研究法をわかりやすく解説します。
月本雅幸
訓点資料の大部分を占める仏書訓点資料について、研究方法を解説します。訓点資料の研究は、個々の訓点資料についての研究、複数の訓点資料からなる資料群についての研究から始まり、訓点資料の解読から明らかになるそこに示された言語の研究に連なり、さらにより広く、訓点資料を活用した表記史、語彙史、文法史などの研究まで、幅広いものがあります。今回は、訓点資料そのものの研究のみならず、訓点資料を活用した研究を志す方々にも役に立つよう、具体的な研究方法とその際に留意すべき点、参考となる事項を解説すると共に、今後の展望についても言及し、広く訓点資料に関心を持つ方々の参考になるようにします。